現地へ赴き、世界の食・麺文化の進化について研究を深めることが、麺ビジネスの未来を見る羅針盤となります。そのため私は視察も含めて海外を渡り歩いています。この場をお借りして、訪問先の食文化をお伝えしたいと思います。第2回目は、日本との関連も深いシンガポールです。 シンガポールの人口は四国より少し多い約540万人、面積は淡路島くらいの小さい国です。昨年8月で建国50年という非常に若い国ですが、東南アジアの国々の中では非常に成功しています。約25年前に初めて訪問した時と比較すると、驚くほど発展した国になっています。経済的に見れば、シンガポールの国民1人当たりのGDPはすでに世界9位で、11位のアメリカ、27位の日本をはるかに抜いています。50年前に独立した時には資源もなく、面積も小さく、何の強みもない東南アジアの小国が、世界でリーダーシップを発揮出来る国になったことは奇跡です。 建国以来、シンガポールは観光立国・貿易立国で外貨を稼いできました。公用語が英語であることで、世界中から投資と優秀な人材を集め、国というよりも株式会社のような、ビジネスに非常に長けた戦略の素晴らしい国なのです。 シンガポールの気候は文字通り常夏で、年中気温は27度強、湿度は平均80%を超える蒸し暑い気候です。11月から1月にかけて一番よく雨が降りますが、梅雨のように1日じとじと降るのではなく、短時間に叩きつけるような強いスコールが降り、降った後は気温が少し下がって涼しくなります。レストランやショッピングモール、自動車などではエアコンが強すぎるので、慣れない日本人には寒すぎるくらいで、夏でも上着が欠かせません。
さて、次にシンガポールの食生活をご紹介します。シンガポールは外食中心で、自炊をすることはあまりありません。商業都市であり、男女関係なく毎日仕事に明け暮れるシンガポール人が多いので、時間のかかる自炊よりも外食が好まれ、外食文化が非常に発達してきました。多数のフードコートや、「ホーカーズ」と呼ばれる大衆向け外食広場があります。一部の観光客向けホーカーズを除けば、ここで提供される食事の値段は日本円で1食260~430円程度で済むメニューが多く、手頃な価格で美味しいのです。
シンガポールの食文化は「世界中の料理が食べられる国」であり、国内の三大民族である中国系、マレー系、インド系の料理はもちろん、フランス、イタリアなどの西欧料理やタイ、ベトナム、日本料理など多様な料理が体験できる国です。中国系の人が76%を占めることもあって、中華料理は種類も多いのですが、大半は暑い国の気候風土に合わせて、シンガポール化された中華料理になっています。 最近、日本でもヒットしているシンガポールの中華系料理として、代表的なものを挙げてみます。海南鶏飯(ハイナンチーファン)は、海南風チキンライスとしても有名な料理で、鶏のスープでゆでた米飯に蒸し鶏を添えます。
タイ料理のカオマンガイ等と同系のフィッシュヘッドカレーは、大型の魚の頭部を煮込んで作ったカレーで、魚のアラを用いたのが起源です。 肉骨茶(バクテー)は骨付きばら肉等をニンニクや漢方系ハーブで柔らかく煮込んだスープです。ニンニクと胡椒が効いた、病み付きになるような非常に美味しい料理です。
麺料理では、現地で大人気の伝統的なプラウン・ヌードル(海老ラーメン)があります。薄いトンコツスープがベースで、上に海老の頭の香味油がかかっています。麺は日本のラーメンそっくりですが、トッピングに立派な海老が乗って価格が日本円で400円と、非常に安いのに驚きました。 ショッピングセンター等に出店する日本のラーメン店は、千円程度と日本より高いのが普通だからです。 他国同様、シンガポールにも日本のうどん店、ラーメン店が多数出店し、日本の麺文化を広めています。日本から進出した店は人気が高く、現地人が開業した店と競い合い、味も日本国内と変わらないくらい高いレベルの店が多くなっています。
今やシンガポールは、国際都市として世界中から最高のもの、最高の料理を集めてきているので、料理のレベルは、ニューヨーク、ロンドン、パリにも負けないくらい、高いレベルの店が集まっています。ヨーロッパにおけるイギリス(ロンドン)同様、アジアにおけるシンガポールの食の進化に、注目していきたいと思います。
今回は現地でラーメンスープのベースを研究しました。新しいやり方にチャレンジすることで、いつもと違った味に仕上げることができました。 より良い商品を提供できるよう、精進を続けてまいります。